情報システムの導入に関する覚書
ふう。仕事の関係でいろいろとヒアリングをして回りました。まあ、この程度のヒアリングに時間をかけているようでは未熟者ではありますが、ネットに載せておくと、いろいろ便利なので私的なメモではありますが、記事にしておきます。複数の関係者の方々に音声・データ通信をとりまぜてインタビューをしたのでごちゃごちゃになっていますが、公表できる範囲(これで十分なのですが)で要点をネットに乗っけておきます。
本当にどうでもいいのですが、まだ苦手な作業(「仕事」ではなく「作業」と呼べるレベルまで追い込みましたが)が残っているので、今週も不定期更新になりそうです。いずれもノーミスが基本で、最後の段階で気を抜くと、危険極まりないので怖いのですが。
(1)固定電話と移動体電話の融合(Fixed Mobile Convergence: FMC)
事業所向けではFMCの導入によって、利用者側では、携帯電話の利用による通信利用料の支払いを抑制することができる。通信事業者からすれば、固定電話の契約解除の減少を抑制することが狙いである。
先進国では有線と無線が混在する状態が続くだろうが、新興国では無線が主流となるだろう。先進国でも、宅内・施設内では無線が主流となる見通し。
先進国のキャリアが推進する固定電話網のIP化とFMCは固定電話網からの退出を抑制することが主たるねらいとなっている。合衆国では約30%の従業員が事業所内で固定電話に容易にアクセスできる環境でも携帯電話を利用するという調査結果がでている。もちろん、FMCの導入で顧客の利便性は向上するが、主として費用削減の効果が大きい。個人向けでは、いわゆる「トリプルプレイ(電話、インターネット、動画配信)が見込み以上に成長している。ただし、どの程度のカヴァレッジを確保できるのかは不透明である。
(2)データ系システム会社がキャリアを選択する要因
システム構築を行う事業者が重視するのは、キャリアの回線のデータ容量と価格である。都市部ではNTTやKDDI、ソフトバンクなどの競争が存在する。地方部でも、かならずしも、NTTの独壇場ではない。たとえば、小売業の場合、単に事業所が存在するという場合には、データ容量が小さいが、データ通信の拠点(本社機能ではない)を設置するとなると、ファイバーを何芯も必要とする。このような場合、NTTがかならずしも回線を保有していない場合がある。
この1、2年で企業の情報システムへの投資意欲が強まっている。その意味でパワードコムは、投資のタイミングが残念ながら早すぎたのかもしれない。パワードコムは、高品質の回線を、都市部を中心に多く、保有していた。しかし、投資を大規模に行ったのが5年程度前であり、合併前は投資の回収が困難な状態であった。これを吸収したKDDIはNTTと対抗するキャリアとして生き残る可能性が高い。
(3)企業のデータシステムの品質と信頼性
LANやWANなどのシステム構築にはネットワークを構築する専門の会社がキャリアから通信回線を主として賃貸し、顧客に提供する場合が多い。この際、回線賃貸料は、システム構築の費用として上積みされる。顧客がシステム構築を依頼する場合、顧客が最も重視するのは、価格であり、次にサービスの種類を重視する。サービスの種類とは主としてデータ容量である。
キャリアが、システム構築会社を中抜きしてデータ通信サービスを提供する可能性があるかといえば、非常に難しい。ネットワーク構築に際して重要なことは、トラブルシューティングである。新規にネットワークを構築する際にも、追加的にネットワークを付加する場合にも、トラブルがつきものである。トラブルは、LANではほとんど生じないが、WANではほとんどの場合、生じる。異なる拠点間のプロトコルが主たる原因ではあるが、トラブルには多様な原因があり、実際にはマニュアル化することが困難である。トラブルを経験しないと、システム構築は進化しない。企業内のシステム構築のノウハウは、旧第二種電気事業者内部の人材に数十年にわたって蓄積されているため、キャリアや顧客が同等の人材を内部に育成するインセンティブに乏しい。NECや富士通、IBMなどのグループを除くと、自前でシステム構築をするよりも、事業者に依頼したほうがはるかに費用が小さい。
他方で、信頼性は音声・データ通信ともに決定的である。信頼性が損なわれると、1週間以上、続くとなると、顧客の業務に支障がはなはだしい。顧客が納得する期間は2-3日程度である。ただし、金融(銀行や保険、証券など)は除く。これらの場合には、企業と顧客との関係で1日たりとも支障が生じては信用に関わるからである。まして、システムを構築してデータに欠損が生じたり、データベースの移行にともなってデータの内容が変更される(極端な場合、預金口座の金額が変化してしまう)などのことが生じると、経営上だけでなく、社会的問題に発展する。
システム構築は、ほとんどの場合、逐次的である。このため、過去のデータベースを新しいデータベースに移行する際にトラブルが生じることが多い。また、逐次的であるため、納入する端末などが統一されていないことが多い。このため、規格や標準が統一されていない場合が多く、立ち上げの際に全くトラブルが生じないことの方が稀である。品質を差別化しているわけではないが、どうしてもバラツキが生じてしまう。
(4)システム構築事業者のタイプ
システム構築に携わる事業者は、数百社程度である。そのうち、総合的なシステム構築を行う事業者は10社前後であると推測する。システム構築は、大雑把にいってネットワーク構築とアプリケーションの導入、保守サービスなどの分野に分類される。総合的という場合には、これらをすべて行うことができる事業者であり、ある特定の分野に特化する専門的な事業者の方がはるかに多い。
とくにアプリケーションの分野には多くの事業者が存在する。製造業向けと小売業ではアプリケーションが全く異なる。金融や医療など特殊なケースを除いても、業種・業態によって要求されるアプリケーションは種類が多様である。このため、アプリケーションの分野には専門的な事業者が多い。
大企業・中堅企業向けのシステム構築では、総合的な事業者が優位にある。ただし、これらの事業者も、専門的な事業者と連携してシステム構築を行うことが多い。情報システム自体が専門性の高い分野ではあるが、総合的な事業者は分野内での総合商社、あるいは「百貨店」としての性質を帯びてきている。システム構築にあたって顧客は、総合的な事業者に「丸投げ」して、必要に応じて専門的な事業者と連携する場合が多い。
今後5年程度で、中小を含め、情報システムへの投資が一巡する見通しであるため、今が最もよい時期かもしれない。
(追記)下線部を修正いたしました(2006年12月19日)。
| 固定リンク | コメント (3) | トラックバック (0)
最近のコメント